舌撮影時のF値と被写体深度について。
現在、データのデジタル化及び通信機能の向上により手軽に携帯電話のカメラで撮影が楽しめるようになった。日常臨床時においてもその手軽さから疾患患部の撮影や治療前後の舌象の変化を確認及び記録のため撮影に用いている場合が多い。
しかし、携帯電話のカメラのマクロ機能(接写及び小さい物を大きく撮る機能)は物足りず、撮影できる舌の大きさ小さい事や色彩がハッキリ過ぎて正確でない事が多かった。
そこで一眼レフデジタルカメラ(Sony α77Ⅱ)、50㎜マクロレンズ(2.8/50)及びリングライトを用意し手持ちにて撮影を行った。
舌に近づいてマクロレンズの機能を生かした撮影を行うと、焦点が舌手前の舌尖に合い、奥の舌根部がピンボケする舌色や舌苔が不鮮明な画像が撮影された。またその逆もあり、三脚を用いてカメラを固定した場合でも舌全体を正確に撮影する事が出来ない同様の結果に悩んでいた。
当初の私は写真の撮影知識に乏しかったため、被写体との焦点に問題があると考えた。
そこでカメラが被写体と焦点を合わせるオートフォーカス(以下AF)ポイント(フォーカスポイント)の設定に問題があると考えた。レンズの絞りとシャッタースピードはカメラの自動制御で撮影できるプログラムモード(以下Pモード)のままフォーカスポイント設定のみ変更、撮影を行った。しかし撮れる画像はいずれも後半部がピンボケする目的とは違う全体的にぼんやりした画像が撮影された。
カメラの性能か、使用するレンズ(マクロレンズ)の特徴なのか、また被写体までの距離なのか迷ったが、マクロ撮影方法やAFポイント設定方法に以外に誤りがあるかもしれないと考え情報収集を行った。
結果、写真の撮影にはF値(レンズの絞り)とシャッタースピードの速さや感度(ISO)の設定により様々な画像が撮影できる事が分かった。さらに被写体深度(焦点が合う点から奥までの距離)はF値で変化することが分かった。
一般的な植物や昆虫とは異なる人の舌が被写体となるマクロ撮影は、その方法文献も少ない。このためF値と被写体深度の変化画像を実験撮影した。
写真一番左はF2.8、中央はF16右はF32である。
左から右へ行くにつれて被写体深度が深くなっている(奥まで焦点が合う)のが分かる。画像粒子もシャープになる。
記録として残すには一番右の設定がよいように思える。
しかし舌診は舌の表面の潤いも需要な所見要素であるのであまりシャープすぎるのも好ましくない。
このため目視ではあるが一番バランスが取れている中央の設定を当治療院ではベスト基本設定として採用している。
今後は色彩当の再現性を考慮した内容の実験を検討している。